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DNP GLOBAL INTERIOR SEMINAR

パネルディスカッション

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RoomClipの投稿写真から日本のすまいの「北欧インテリア」を考察する

日本でも人気の北欧インテリア。では、生活者は実際どのように北欧インテリアをすまいに取り入れているのか? お二人にRoomClipに投稿された生活者の実例写真を題材にして、日本独自の解釈と本場のインテリア空間の相違点等を対談形式で語っていただきながら、心地よい空間のありかたを考察しました。

講師:Tunnel株式会社 執行役員 川本太郎氏
講師:BO BEDRE JAPAN 代表 Leon Esben Ota氏

川本 RoomClipで「北欧インテリア」のタグが付いているものはとても多いです。でもそれがデンマークなのか、スウェーデンなのかフィンランドなのか。よく理解しないまま北欧のタグを付けています。国によってどのような違いがあるのですか。

レオン デンマークはモノトーンが多いのが特徴です。これは自然光を取り入れるためと、自分でリフォームするためです。そして自然光もそうですが、家の外と中のレベルを同じにする、外のものを中に入れるのがデンマークのインテリアです。スウェーデンはその逆で、中のものを見せたい。まず自分の好きな椅子、絵画などを中心に置いて、インテリアをつくっていくスタイルです。

川本 日本ではあまり人を自宅に招きません。RoomClipが支持されている理由はそこなんですね。家をきれいにしても、ソファをオシャレにしても、褒めてくれる人がいない。デンマークではまったく違うんですね。

レオン お客様や友人は、必ず家に招きます。それは家のほうがヒュッゲだから。キッチン、リビング、ダイニングをメインに、みんなが集まれる場所を家の中に必ず用意しています。インテリア教育と言ったら語弊があるかもしれませんが、いろいろな家を見なければ、自分にどんなインテリアが合うのかわかりません。いろいろな家を訪れて、インスピレーションを得ることで、自分の空間をつくり上げていく。すると今度はそのインテリアを人に見せたくなる。デンマークではその繰り返しで、インテリアをつくることが多いです。

川本 この写真はRoomClipに投稿されたものです。白とグレイッシュを使っているのですが、壁紙なんですね。デンマークでは、壁紙はあまり使わず、塗る方が多いそうですが。やはりそれも自分でやるのですか?

レオン 塗装が圧倒的に多いです。私も何回か友人の家のペンキを塗りました。家の中をペイントするのは大仕事なので、信頼する人にしか頼まない。ということは、ここにもヒュッゲの要素がありますね。

川本 北欧家具のブランドには「安価で大量生産」というイメージがあるものもありますが、それは国の違いですか?

レオン 国の違いはインテリアに表れます。デンマークは資源のない国で、効率よく木を使うために工夫をするなど、高品質で長く使える家具を職人さんがつくるという伝統があります。そういった点は、日本も同じ印象を受けます。実は日本とデンマークは、昔からお互いにデザインの影響を与え合っていました。日本とデンマークは外交樹立150周年になりますが、150年前、デンマークの船が日本に辿り着いて、日本の工芸品に感動し、国に持ち帰ったものが3つあります。折紙と、塗り物や箸などの木製品と、刀の鍔です。これらがデンマークの社会にどのような影響を与えたかというと、デンマークの著名な照明デザイナーであるクリントとポール・ヘニングセンは、折紙からヒントを得て照明をつくりました。また、デンマークの近代家具の父と言われているコーア・クリントは、日本の木製品の無駄を排したシンプルなスタイルに影響を受けています。みなさんは今、デンマークのデザインから学びたいと言っていますが、その原点は実は日本にあるのです。

photo (デンマークデザインミュージアム “日本から学ぶ”)

川本 日本の伝統的な家屋は、客間や応接間があって、デンマークのように人を招くようにできていたし、縁側や借景など外と内のつながりもありました。昔の日本の家造りの発想、住まい方の発想は、今のデンマークととても近いと感じました。そんなデンマークの住まい方と日本とはどう違うのか。そのひとつはDIYができるかどうかではないでしょうか。DIYを扱う会社社長が「競合はテーマパークだ」とおっしゃっていました。休日に子ども部屋の壁を家族みんなで塗ったほうが、テーマパークに行くよりずっと思い出になると。住宅設備メーカーさんの中には「DIYがライバルだ」という方もおられるのですが、そうではなくて一部DIYの要素を残すような住宅設備が増えていくと、デンマークスタイルのようなものが少しずつ広がっていくのかなと思います。そんなデンマークスタイルのベースになるのが、ヒュッゲなのですが、デンマーク人はそれをどう学んでいくのでしょうか。

レオン 社会、家庭で学ぶヒュッゲもありますが、学校で学ぶというのが大きいでしょう。小学校から中学校まで、通常の科目と同じように週に1回ヒュッゲタイムがあります。クラスの1人がケーキを持って来て、みんな好きな飲み物を飲みながら、社会の話をします。勉強の話は一切しません。好きなクッションを持って来るなど、自分の楽しい空間をつくって、話したい人と会話し、ソーシャルな感覚を養います。

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川本 自分が心地よく人とコミュニケーションするために、どういうアイテムが必要なのかという感覚を小学生のときから身につけているんですね。だから友人を家に招くのも自然にできるのだと思いました。今後、「ヒュッゲ」「デンマーク」が日本のインテリア業界でもキーワードになってくるでしょう。引き続き注目していきたいです。

レオン 日本人のみなさんがつくったヒュッゲを紹介してほしいです。そんな場がつくれたら、ぜひ参加したいですね。