すまいみらい研究所 DNP

  • LINEで送る
 

ホーム みんなで考えるみらいのすまい 東京大学千葉研究室 共同研究 第1回 ミーティング

田中誠一、藤井裕友、大原千佳子、深田晶子(DNPすまいみらい研究所)
千葉学、成瀬友梨、海法圭、落合瞳子、千葉学研究室所属の学生の皆さん(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻千葉学研究室)
プロデューサー:安東孝一(アンドーギャラリー)
エディトリアルスーパーバイザー:寺松康裕(建築編集研究所)
ゲスト:久永一郎、鈴木守(大日本印刷C&I事業部)

素材の展開

「格子」というキーワードは、素材に目を向けるきっかけにもなりました。

──建具について考えていくうちに、格子の密度や素材が変わるだけで、劇的に性能が変わってくるあたりが世界共通の言語だと感じました。
それに関連して、最近の優秀なスポーツウエアなどでも同じような事が行われているのではないか、ということから、素材についてもリサーチを始めました。(千葉学教授)

素材の事例は、古来からの日本建築素材である、漆喰、土壁、漆、和紙などから始まり、現代の微細加工や化学的処理、分子的組成を扱うものまで幅広く集められました。

「ものの表面上で何が行われているのか」というテーマでは、光触媒技術を用いたハイドロクリーンミラーや、髪の毛に微細な溝を掘ることで髪色を変える技術、素材に炭素を蒸着させ、吸光率をほぼ100パーセントにする技術など、微細加工を用いた技術が多数紹介されました。
素材についてはDNPからの参加メンバーにより、専門的見地からの指摘や意見なども多く提示され、議論が展開されました。

「建具」と「素材」がリニアにつながる共同研究へ

事例を見ながらのディスカッション終了後、まとめの議論が行われました。

まずディスカッションを通した感想が、田中所長から述べられました。

──現段階から素材も視野に入れるのは、今後の方向性が見いだしやすくなるように思います。私は議論を聞きながら、例えば「格子の大きさ」をナノレベルまで小さくしたらどんなことができるだろうと考えました。微細加工は弊社の得意分野なので、実際の素材開発には時間がかかりますが、現段階から「建具と素材」という2パターンで議論できたら、すごく面白いと思います。それをどこかで組み合わせて、何らかのかたちにしていく。この共同研究の展開について、そんなイメージを持ちました。(DNP田中誠一氏)

つづく議論では、今後の展開について、さまざまな意見が交わされました。

──取り上げられた建具の、デザインや選ばれている素材、形態について、その背景を分析していくと、何か新しい発見があるように思います。国ごとあるいは地域ごと、極端に言えば宗教まで絡んでくると、何か面白いものが見えてくるような気がします。(DNP藤井裕友氏)

──建具は人間が実際に触れる部分ですが、感じるデザインの部分、「開けて気持ちのいい襖」みたいなものは、あまり聞いたことがありません。例えばプロダクトでは、高級車のドアは高級な音がしますし、事業用の車は質実剛健な価値観というものが、インタラクションに現れていると思います。そういう視点もあるように思います。(DNP久永一郎氏)

──中国の少し変わったモジュールの話や、丹下健三さんのオリジナル・モジュールの話など、ちょっと整理して、その理由が見つけられれば面白いと思います。(DNP鈴木守氏)

──建具の地域性と時間、さらに素材も押さえてあって、必要なことの多くが提示されていると感じます。建具のエレメントと環境のファクターによるマトリックスで捉えることもできると思います。(エディトリアルスーパーバイザー 寺松康裕氏)

東京大学からは、海法氏からのコメントがありました。

──その国の文化的なことや、人間のちょっとした日々の所作、その場で展開されるさまざまなコミュニケーションみたいなことが、建具という、建築で唯一動かせる部分があることによって、よく見えてくるんだなと感じます。
ご指摘があったように、動かす部分であるからこその「人の感触に訴えかけるもの」ということが、今まであまり議論のなかでも出てこなかったので、文献や資料にあたるだけではなく、これからは実際に現物を見に行って、体感してみることもあって良いのかな、と思いました。
素材については、その素材そのものが使えるかどうかではなくて、その素材が追求している人の関わり方みたいなものが、もう少し見えたりすると、面白いのではないかと思いました。それが上手く建具の話、建築的な話と結びついて、建築の皮膚感覚みたいなものに通じてくると面白いと思います。
建具というのは「何を通して、何を遮断するのか」というところが根本なのかな、という気がしています。今後共同研究を進めていくにあたって、全く新しい素材を使うのは難しいと思いますが、先ずは「何を遮断して、何を通すか」という観点で、いくつか素材をいただいて研究を進めてもいいのかも知れません。次のフェーズのお話しかも知れませんが、そういった情報交換を今後期待するところです。(海法圭氏)

さらに議論は細かな技術的可能性や、技術だけでは解決できない部分への建築的アドバイスへの期待などが議論として交わされ、終了しました。

1時間の予定を大幅にオーバーし、2時間を超えた熱量の高いミーティングでは、テーマがどんどん膨らみ、広がる部分とある方向性に収束する部分の両面が感じられ、今後2年間の共同研究への期待が高まる初回となりました。