すまいみらい研究所 DNP

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ホーム みんなで考えるみらいのすまい 東京大学千葉研究室 共同研究 第4回 ミーティング

田中誠一、大原千佳子、深田晶子(DNPすまいみらい研究所)
千葉学、成瀬友梨、海法圭、落合瞳子、千葉学研究室所属の学生の皆さん
(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻千葉学研究室)
プロデューサー:安東孝一(アンドーギャラリー)
エディトリアルスーパーバイザー:寺松康裕(建築編集研究所)
ゲスト:近松惠吉、安齋英弘(DNP住空間マテリアル デザイン開発部)
星享(大日本印刷 住空間マテリアル事業部)

秋の気配が感じられるようになった8月27日、DNPすまいみらい研究所と東京大学大学院千葉学研究室の共同研究第4回ミーティングが、東京都文京区の東京大学本郷キャンパスにて行われました。前回に引き続き、ゲストとしてDNP住空間マテリアルのデザイン開発部から2名、大日本印刷の住空間マテリアル事業部から1名が参加しました。

「建具」をテーマにしたミーティングも4回目。今回は視点を変え、DNPの商品開発プロセスとコンセプトについてのレクチャーを中心に、会は進められました。

冒頭、DNPすまいみらい研究所の田中誠一所長から、今回のレクチャーの趣旨について説明がありました。

──国内で建設される住宅のかなりの部分で、われわれのマテリアルが使われています。そうしたシェアを獲得しているマテリアルが、どのようなプロセスや判断基準で製品化されていくのか、以前の工場見学の際も千葉先生からご質問がありました。
今回は実際にデザインを担当している、DNP住空間マテリアルのデザイン開発部から、生活者の視点をどのように捉え、それをプランニングにどう反映させているのか、というところを中心に、ご紹介できればと思います。(DNP田中誠一氏)

製品にストーリーが求められる時代

デザイン開発部部長の近松惠吉氏によるレクチャーは、まず開発におけるコンセプトとプロセスについて語られました。実際の製品事例を紹介しながら、マテリアルの開発において大切にしていることや、現状の問題点や社会状況、デザインのモチーフや材料の調達に至るまで、話が及びました。
その中でクローズアップされたのは、社会からの要請が扉や床といった製品としての「もの」の提供から、体験やストーリーなどの「こと」の提供に変わってきているということです。プリントされる模様の素材がどうやって発見されたのか、といった開発秘話がセールスポイントになったり、昔の時代に流行ったテイストや、古くからの伝統工芸の再解釈が新しいものとして受容されたり、選ぶ側の志向性の多様化や個人のこだわりが、購買の大きなファクターとなっています。
それに対応するため、発想力、感性の部分がとても重要になってきました。

──われわれの仕事では、特に世界に出る場合はファッションをつくる必要があります。そこはストーリーだけではなかなか難しく、最終的には「もの」がついていかないととても難しいです。例えばイタリア人デザイナーのパオラ・ナヴォーネ氏※1と協働したメラミン向けデザインは、デザインも印刷も高い評価をいただいています。これも最初の部分にはストーリーがあるのですが、最終的にわれわれに求められるのは「もの」なんです。(DNP近松惠吉氏)

※1 パオラ・ナヴォーネ
1973年、トリノ工科大学建築学科を卒業し、イタリアの前衛的デザイナー集団スタジオ・アルキミアに所属。イタリアを代表するデザイナーのエットーレ・ソットサス氏らとともに活動した。活動範囲はインテリアから家具、建築、評論や執筆に至るまで幅広い。

共同研究はどこに向かうのか

引き続き、住宅産業の現況からマテリアルの供給形態、マテリアルに要求されることの変化について、さまざまな事例やデータを交え、レクチャーは進められました。
住宅産業でも消費者からは「もの」に加えて「こと」への視点が要求されてきています。そのような状況に加え、メーカーサイドの状況にも変化がありました。それはポジティブなものばかりでもないようです。

──住宅産業に限ったことではありませんが、日本のメーカーでは近年、ひとりのリーダーが方向性を示すことよりも、合議での意思決定が増えてきているように感じます。それではデザインが非常にコンサバティブなものばかりになってしまう。その状況下で、われわれが何か発信して変えていく必要性を感じていて、今回の共同研究も、そういうところにどんどん発信していけるような中身にしていけば、ひょっとすると大きなウエーブをつくれるかも知れないな、ということを期待しています。(DNP近松惠吉氏)

──これは仮説ですが、マテリアルという段階に留まらず、最終的な製品まで視座を拡げれば、この共同研究の持つ意味はとても大きくなるのではないでしょうか。もちろん、技術的な問題やコストの問題、もっと言うと現状のクライアントとの競合が発生してしまうことも含めて、ハードルは多いかも知れませんが。
やはりDNPは印刷に強くて、千葉研究室は建築やデザインに強いので、この共同研究の成果として最終製品まで加工するところまでやったとすれば、一緒にやる意味がとても大きいように思います。表層だけの話ではなく、三次元的にやれる方法論が見付けられれば、何か生まれてくるような気がします。(プロデューサー安東孝一氏)

──今は基材と表面というように分かれているものが、表面がそのまま建具になるような展開が出てくると、面白いですね。(千葉学教授)

──あまりアピールされていませんが、例えばフローリングに印刷シートが多く使われるようになった背景には、われわれと建材メーカーとの間で、技術的なキャッチボールが行われた成果であるという部分もあります。シートを使う場合に起こるさまざまな問題について、非常に細かく打ち合わせをして、通気のあり方や、防湿材の提案など、半完成のあたりまでは供給している事例もたくさんありますので、完成品まで関わるという方向性は、可能性のひとつとしてあると思います。(DNP田中誠一氏)