すまいみらい研究所 DNP

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ホーム みんなで考えるみらいのすまい 東京大学千葉研究室 共同研究 第5回 ミーティング

田中誠一、深田晶子(DNPすまいみらい研究所)
千葉学、成瀬友梨、海法圭、落合瞳子、千葉学研究室所属の学生の皆さん
(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻千葉学研究室)
プロデューサー:安東孝一(アンドーギャラリー)
エディトリアルスーパーバイザー:寺松康裕(建築編集研究所)
ゲスト:山田浩之(大日本印刷ABセンター スマートシティ推進室)
星享(大日本印刷 住空間マテリアル事業部)

プロジェクトの成果をどう生かすのか

千葉教授のプレゼンテーション後、DNPすまいみらい研究所の田中所長から、ある提案が出されました。

──団地再生のプロジェクトに関わることがあるのですが、ハウスメーカーやディベロッパー、公的機関などとプロジェクトを進めていくと、IoT※6や福祉サービスなど、ソフトのアイデアで解決を探る方向性にどうしても落ち着いてしまい、ハードの部分でのアイデア不足という問題が常につきまといます。
この共同研究で得られたことを、例えば住宅団地を再生するための、コミュニケーションやコミュニティのあり方のようなものを具現化した間仕切りや建具というような話にまとめていくと、社会的には良いインパクトがある話になり、そういうやり方もあると思っています。(DNPすまいみらい研究所 田中誠一所長)

※6 IOT
Internet of Thingsの略。「もののインターネット」と訳され、インターネットやクラウドと世の中のさまざまな「もの」がつながることで、相互に逝去する仕組みのこと。家電や給湯機器などをネットにつなぎ、外部より操作する技術など。

ABセンター・スマートシティ推進室の山田氏からもコメントがありました。ABセンターは大日本印刷の新規事業(Advanced Business)を考えるセクションです。

──私の所属するスマートシティ推進室は、次世代の「まち」をイメージする言葉を冠したセクションで、スマートシティに関するあらゆる事象の受け皿になっています。
団地や丘陵地のニュータウンは、高度成長期の住宅不足への対応による計画でつくられており、現在ではハードの老朽化、住民の高齢化に伴い、高いメンテナンスコストやバリアフリー対応不足、買い物難民などの問題が表出し、生活拠点としての維持が難しくなっているところが数多くあります。
団地再生はハード面で住民の出費を伴うことになるため、ソフト面での対応が求められるケースがあります。各地で行われるワークショップや実証事業ではユニークなアイデアがありますが、構造やコスト面などで実現可能性に乏しく、面白いけれど実際にはできないことが多いので、根本的な解決にはなかなか至りません。
先ほどの北陸の伝統的建具や千葉先生の作品を拝見して、建具で人の気配を感じさせつつ、独立性を保つというあり方は、団地再生に必要な、住民に過度な負担を強いない、コミュニティー再生の実現に向け、とても示唆に富んでいると思いました。(スマートシティ推進室 山田浩之氏)

提案を受け、さまざまな反応がありました。

──最終的には住空間に落とし込みたいとは考えていました。戸建住宅だと社会や地域的なことへの広がりが見えてこないと思っていたので、団地であれば住空間でもあり、それが地域の問題や社会的なストックの問題にも、いろいろとつながって良いのかなと思います。(千葉学教授)

──例えば片廊下型の団地の場合、北側廊下の前には意外と木が多かったりするので、廊下に面した部分の境界面のつくり方が、コミュニティにどう影響するのかなど、ひとつの住宅だけではない話に展開できそうなのは面白そうです。(海法圭講師)

──最近は賃貸でもリノベーション※7が自由な団地が出てきていて、昔はスーパーマーケットだった部分に若い人がオフィスやアトリエをつくったりして、ちょっとした人気になっているようです。若い人が戻ってきて、職住近接も実現しているので、成功していると思います。(成瀬友梨助教)

──団地はある意味で空間のユニットが集約しているところだと思います。建具も建築の部材として集約化していますから、とても堅いところに展開したという印象です。(エディトリアルスーパーバイザー 寺松康裕氏)

──以前はマテリアル単品で発想されていたものが、現代では空間そのものを考える中で、そこに使うマテリアルがどうあるべきか、という発想に変わってきていると思います。そのあたりをご提案していただければと思います。(DNP近松惠吉氏)

少子高齢化や建物の老朽化の問題で、団地を維持していくことが難しくなっている事例は日本全国に数多く存在します。「建具」をテーマに進めている共同研究に、より強い意味が加わったミーティングとなりました。

※7 リノベーション
既存の建物を改修し、用途や機能の変更をすることで性能の向上や付加価値を高めること。リフォームに性能向上や付加価値を高めるという目的を追加したもので、大規模な変更・改修になることが多い。