すまいみらい研究所 DNP

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ホーム みんなで考えるみらいのすまい 東京大学千葉研究室 共同研究 対談:共同研究で目指すもの

千葉 学(東京大学 教授) ×田中 誠一(DNPすまいみらい研究所 所長) 
 対談:共同研究で目指すもの
参加者

千葉学(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻千葉学研究室)
田中誠一(DNPすまいみらい研究所)
プロデューサー:安東孝一(アンドーギャラリー)
エディトリアルスーパーバイザー:寺松康裕(建築編集研究所)

視点を素材まで拡げてみる

千葉: 今の様々な素材開発は、スケールの大小に関わらず「何を通して、何を通さないか」という、表面に求める性能のようなことがテーマになっていると感じます。それは建築の表層や建具とも共通するので、素材を抜きにしては語れないと思うようになりました。素材を語ることで建具や住まい、街の未来を語ることができることもあると思います。そうした中で印刷の現場を見せていただくと、印刷技術だけ使っても様々な可能性があると、個人的に想像が膨らみます。
話が逸れますが、個人的にスポーツウェアの素材にとても興味をもっています。例えばウールの良さを人工的に再現しようとして開発が進んでいくと、いつの間にか本物のウールの性能をはるかに超えるものが出来てしまう。今度は新しい機能が開発されると、新しい活動が生まれてきたりする。素材の進化による可能性は建築にもあるはずで、そういうことから表層の機能、何を通して何を通さないかみたいなことが考えられていくと、とても面白いと思います。

田中: 素材も方向性のひとつとしてあることは、こちらとしてもアウトプットに落とし込みやすい印象です。

千葉: もちろん実際に製品化しようとすると、コストやニーズの問題がでてきますが、このような共同研究の成果には、即効性のある話もあれば、10年ぐらい経って成果が生きることもあると思います。そのあたり、ある幅を持って見ていただけると良いかなという気はします。

田中: 一般の生活者の方と、ある程度建築に携わっている方との情報格差は、実際にはかなり大きいと思います。恐らく一般生活者の方に住まいの未来や現状について聞いたときに得られる情報には限りがある。今回、建築の知識を持った学生や研究者の方々と産学で共同研究できることに、非常に期待を持っています。
われわれもお客様も、この時代に何をつくれば良いのか、完全に模索状態に入っている感じがしています。恐らくアイデアだけで突き進める時代ではなくなってしまい、コンセンサスの得られる「つくる理由」が求められるようになりました。この共同研究で、建築のプロフェッショナルを志す方々の英知を結集した「つくる理由」をきっちりと固め、これからの方向性を見いだしていければと考えています。その結果、私たちの顧客ニーズを遙かに超えた製品や、業界を革新させるような住宅システムというようなところまで到達できれば、ありがたいです。

千葉: 私たちは産学の「学」ではありますが、同時に実務でクライアントと向き合い、実際に建築をつくる立場でもあり、そのなかで今の世の中のニーズを日々感じていることも、発想のベースになっています。この共同研究の先にどのような素材や空間の問題が見えてくるのか、ということが、少しでもクリアになる研究にしていければと思います。
僕自身の興味としては、人と人の関係性や、もう少し拡げてコミュニティの問題、場所と建築、場所と場所の問題みたいなことが、とても大切な時代なのではないかと思っています。コミュニケーション手段が多様化し、コミュニティの形式も、仕事上のコミュニティもあれば、地域、あるいは趣味を通じたものもある。そういうものが重なり合っている複雑な時代だと思っているんです。それはそれでひとつの面白さだと思うのですが、こういう時代だからこそ、もう一度動物的な人と人との関係だとかいうものに、改めて着目しても面白いです。2年間の共同研究を通じてそういうことまで見えてくれば、良いと思います。